第8話 「ホワイトニング」へのこだわりが翻訳スタッフをも悩ませる

美白は日本女性の美容の重大なテーマのひとつだ。
以前Hanakoに掲載された漫画にもあった。
主人公は、昼間はつばの広い帽子にサングラス、長袖に手袋、ロングスカート、しかも全身くろずくめ
といういでたちで海辺に登場する。
夜になるとノースリーブとミニスカートでホテルバーにあらわれる。
一緒にいる同僚はみんな真っ赤に日焼けしている中、自分だけ肌が白いという優越感にひたる。

別に肌が白いから偉いとか、美しいとかいうわけではないとは思うが、白いことに命をかけている女性もいるようだ。
そんな切迫観念をくすぐるかのごとく、化粧品メーカーはこぞって美白効果のある商品を宣伝している。
問題は、それを海外にもっていくことになった時に起こった。

某超大手化粧品メーカーの美白化粧品の広告を英訳することになった。
担当することになったのは、帰国子女の女性2名とネイティブコピーライター2名。
キャッチフレーズも考える必要があるので、チームでディスカッションしながらスタイリッシュな英訳に磨きあげていくことになった。
こと、キャッチコピーとなると、和文をそのまま英訳するわけにはいかない。
キャッチコピーの英訳では、言葉を翻訳するのではなく、インパクトやイメージを翻訳する必要がある。
英語のネイティブに同じことを伝えるには、まったく違う言葉をつかわなくてはならない時もあるのだ。
そこで、完全にバイリンガルの女性たちと経験豊かでこだわりやのコピーライターたちが担当することになったのだ。

できばえは予想通りすばらしかった。
きれの良い、スノッブでエレガントでスタイリッシュな英語に仕上がっていた。
美しさを求めるワンランク上の女性の購買意欲をかきたてるような文章だった。
スタッフみんなで、「むー、にくいねー」などとうなりながら原稿をまわし読みして、満足した。

・・・ところが、納品するとすぐ折り返しに、クライアントが激怒りで電話してきた。
「ホワイトニングの化粧品なのにホワイトニングという言葉が一回も出てこない!全部誤訳じゃないか!」
それもそのはず。
英語で「ホワイト」というとちょっとまずいのだ。
顔がホワイトというと能面のように真っ白ということになるし、アジア人やアフリカ人の肌をホワイトにするのはマイケル・ジャクソン並みの色素の操作が必要だ。
また肌の色のことなので、言葉の使い方が人種差別的と受け取られる可能性もある。
いずれにしても、良い印象ではないのだ。
そこで英訳では「肌をブライトにする」「クリアーな肌にする」という表現をしていたのだが、どうしても「ホワイトニング」という言葉を使いたいとのことだった。
たとえそうすることによって商品、企業のイメージダウンになろうとも、どうしても「ホワイトニング」でなければならない程の勢いだ。
そこまでして「ホワイトニング」にこだわるか?!
「ホワイトニング」へのこだわりは、これほどまでに人を惑わすらしい。

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何だかんだ言っても翻訳会社の中でもホワイトニングのコスメは人気。
このエピソードのクライアントの商品のように、テレビや雑誌で大々的に広告していないコスメで、優秀なコスメもよく話題に。
特にノーベル賞まで受賞したシミ無色化美白成分「フラーレン」を高配合しているイレイザーは人気でした。

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posted by Emico at 17:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳現場のプチ事件

第7話 国際的なはずの翻訳会社にも健在な勘違いなお国イメージ

中学校一年生夏休みに、アメリカのマサチューセッツ州の郊外でホームステイした。
その時、ローカル紙の記者が取材に来た。
「やっぱり、カラテとかできるの?」
という記者の質問に、
「あ、柔道なら9歳から12歳まで習っていました。」
と私は答えた。

数日後、私の顔写真入りのローカル紙が届いた。
「日本人の少女が単身ホームステイ
彼女は日本人だが着物姿ではなくジーンズですごしている。・・・・・
典型的な日本人がそうであるように、彼女もまた小さい頃から柔道をたしなむ。・・・・」
そんなことが書いてあった。
日本人といえばフジヤマ・ゲイシャというようなイメージの方程式って本当にあるんだな〜とびっくりした。

ところが、国際的なはずの翻訳会社の中でもそんなイメージの方程式が健在なことが明らかになったエピソードがある。

私が翻訳会社に入社して数週間すると、同じ募集記事で応募した新入社員がそろった。
中途採用なので入社日がばらばらだったのだ。
そして私にとっては遅ればせながら新人研修が行われた。

「で、うちの会社に入る前は何をしていたの?」
研修担当の女性管理職がたずねた。
「はい、私は高校卒業後アメリカの大学に4年間留学して、卒業してからはアメリカで2年間化粧品の販売をしていました。」
「じゃあ、大田さんは英語が得意なのね。大池さんも英語は大丈夫なの?」
「えっと・・・私はカナダのケベック州に留学していたので、英語よりフランス語の方が・・・。」
「そうだったの。沢崎さんは?」
「はい、私はメキシコの大学に通いながら日本語教師をしていました。英語よりはスペイン語の方が得意です。」
「みんなそれぞれなのね。」
「黒田さんは?」
「私はこちらの入社が決まるまでは長崎にいました。・・・・」
「長崎留学ということは、医学関係?得意な言語はオランダ語ね?」

ん????流れ蘭方示現寛斎か???

黒田さんは下を向いてしまった。
「・・・・・・・・えーっと・・・・・SEやってました。理系なんで外国語はあまり得意ではありません・・・。」

冗談なのか、ボケなのか、誰もつっこめないまま研修は進んだ。

研修が終わって、ランチタイムになった。
丸テーブルでお弁当を食べていると、ドイツ語のバイリンガル校正のスタッフが隣に座った。
彼女は国際結婚していて、苗字がドイツ語なのだ。ふと私は彼女にたずねた。
「あのー、だんなさんってドイツ人なんですか?」
「ドイツ人じゃないんだー。スイス人なんだー。」
それを聞いて、無意識に私は彼女に言ってしまった。
「じゃあ、ヨーデルとか歌えるんですね!」
しまったと思ったときには遅かった。
「んなわけないでしょ!」
皆に爆笑されてしまった。

私自身もフジヤマ・ゲイシャの方程式にしっかりはまっていたのだった。

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ちなみに流れ蘭方示現寛斎は、かなりのメディカル・フェチでも満足できる時代医学小説。
長崎でオランダの医学を修得した江戸時代の外科医が主人公。
医学的な記述がめちゃくちゃ専門的で、ブラックジャックを読んでいる気分で楽しめます。
でも実在の人物のお話だそうです。
私の好きな小説だったので、長崎留学と聞いて、ぱっとこれが浮かんでしまったわけです。

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美しくのどかなチロルの村を一大観光スポットに変えようとたくらむ悪徳村長とそれを止めようとする村の魔女やトンマな村人たちのコメディーです。
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posted by Emico at 18:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳現場のプチ事件

第6話 えっ?翻訳会社の社員は瞳がブルー?

念願の翻訳会社への入社が決まり、いよいよ初出社の日が来た。
指示通り、最初は手続きのために総務部に出社した。
「合格して良かったですね!」
試験官だった石田さんが声をかけてくれた。
彼女はショートヘアに濃い目の眉、ぱっちりとした瞳のスレンダーな美人だった。
でもよく見ると瞳の色が妙に黒い。
そうか、カラーコンタクトレンズなのか・・・。
カラーコンタクトレンズをした日本人を見たのは初めてだった。

「それじゃあ、手続きの書類と社内の規則について説明しますね」
丸テーブルに導いてくれた嵐山さんは、亜麻色の長い髪にゆるやかなウェーブのあるトロピカルな雰囲気の女性だった。つややかなマスカラのきいたラッシュの間から深い緑色の瞳がのぞく。
総務といっても、やっぱり翻訳会社はちがうな〜と気後れしながら説明を聞いた。

そしていよいよ翻訳部へ。
翻訳部のフロアの扉を開けると、受付当番の川上さんがすぐに出てきてくれた。
「あの、今日から入社しました沢崎です。よろしくお願いいたします。」
「あっ、よろしくお願いします。じゃあ、ここに座って待っていてくださいね。」
透きとおるような白い肌に黒炭のような黒いセミロングのストレートヘアがサラリとゆれていた。
彼女の涼しい瞳は明るめのブルーだった。
またしてもカラーコンタクトレンズ。

翻訳部の応接コーナーに導かれ、私はどきどきしながら座って待っていた。
ところが、いつまでたっても誰も来てくれない。
そのまま時間がどんどん過ぎていった。
10分、20分、30分・・・

すると、またしても美人の登場。
深煎りコーヒー豆色のワンレングスの長い髪ですっとはなすじの通った川中嶋さんだった。
「すみません、手違いで今日から入社されるっていう連絡が人事からきていなかったので・・・。今企画営業部の部長が来ますから。」
「すみません・・お手数かけます・・・。」
彼女のあまりの美しさに息がつまる思いをしながら、私は頭をさげた。

40分、50分・・・・
待ちはじめてから一時間がたとうとするときに、清楚でかわいい感じの面接官だった女性が登場した。
私の直属の上司の反町部長だった。
「ごめんなさいね。手違いがあって・・・。今日から翻訳企画営業部でコーディネートの仕事をお願いするので、よろしくお願いしますね。」
部長の顔を見て何だかうれしかった。
実は面接の時から、彼女が上司だったらいいのにな〜と密かに憧れていたからだ。

席につこうとしたところで、そばに立っている女性に挨拶した。
「今日から入社した沢崎です。よろしくお願いいたします。」
「あっ、東山さんのおともだちっていう?」
「あっ、そうです。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。私はバイリンガル校正の日向です。」
私が志望して不採用になった部署のひとだった。
日向さんは東大卒でイギリスの大学院の留学帰り。小顔で八頭身な彼女のつぶらな瞳はブルーグレーだった。

それから私は翻訳部の人たちに挨拶してまわった。
振り向くひと、振り向くひと美人ばかりで、しかもいろいろな色の瞳。
ただでさえ外見にコンプレックスのある私はめちゃくちゃ気後れしながら、入社初日は終わった。

後でわかったことなのだが、ちょうどこの時カラーコンタクトレンズのモニタリングをしていて、社内の希望者がモニターとして参加していたそうだ。

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ちなみにカラーコンタクトレンズといえば、安心なのがジョンソン・アンド・ジョンソン、シード、チバビジョンあたりでしょうか・・・↓




もっといろいろなコンタクトレンズを試してみた〜い!!ときはこちらが便利↓


posted by Emico at 14:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳現場のプチ事件

第5話 落ちてもくじけるな!入れる翻訳会社は必ずある!!

夜翻訳学校に通い始めて1ヶ月、昼間の就職活動は依然苦戦続きだった。
そんなある日、高校時代の友人と久しぶりに会うことになった。
彼女はアイルランドの大学院に留学を希望していて、情報収集のためにブリティッシュ・カウンシルに行きたいということだったので、一緒に行くことにした。
ブリティッシュ・カウンシルはイギリスやアイルランドの留学の情報収集ができるだけでなく、英語の本の図書館もあるので、図書館で過ごすのもいいなと思ったからだ。

ブリティッシュ・カウンシルの近くに神楽坂があり、そこにめちゃくちゃおいしいコーヒーを出してくれる喫茶店がある。
帰りに彼女と私はそこでコーヒーの香りに陶酔しながら、お互いの近況を報告しあった。
すると、彼女は私が海外で日本語教師をしている間、翻訳会社でバイリンガル校正のアルバイトをしていたと語った。翻訳者が翻訳した訳文と原文を見比べて、タイプミスや訳ヌケがないかチェックする仕事だ。
「実際の翻訳が読めるから、翻訳者志望なら絶対いい経験になるよ!募集していなくても売り込んでみなよ!私が担当者に連絡してみるから。」

ひょんなことがきっかけで、すごいチャンスができた。
彼女は校正部門の管理職に連絡を入れてくれて、試験と面接を受けられることになった。
ところが、試験は英語で、TOEIC900点レベルの英語力が望まれていた。
そして、校正者には英語以外の実力は求めていないという説明を受けた。
私にとって英語は第二外国語。本当はスペイン語で勝負したかった。
というわけで、せっかくのチャンスはモノにすることはできなかった。

不合格の通知を受け取ってからしばらくしたある日、とらばーゆに同じ会社の募集広告をみつけた。
募集しているのは管理職アシスタント。
その広告を見た瞬間いろいろな想いが私の中をかけめぐった。
「あ、落ちた会社だ。でも翻訳会社に入りたいな。入社できればまた新たなチャンスがあるはず。
職種が違えば仕事も違うはずだから、求められる能力も違うはず。
秘書検定も受けたし、貿易会社で秘書のアルバイトした経験をアピールして応募してみようかな・・・。
でもストーカーと思われるかな・・・。でも採用担当者が違うかな・・・。・・・・・。
とにかく恥も外聞もかきすててやるしかない!」
私は送り状に二度目のチャレンジである旨を書き、どうしても翻訳の仕事の現場で働きたいという情熱をアピールした。

応募書類を提出してしばらくたち、なかばあきらめていた頃、書類審査を通過した知らせが来た。
やった!このチャンスは逃しちゃいけない!
とにかく「やる気」を一番にアピールしよう!
自分が星一徹のような目になっているのがわかった。

案の定、職種が違うので、試験も面接の担当者もまったく違っていた。
前回はまじめで気弱な感じの中年男性が面接官だったが、今回は美女が3人。
シャープな感じの女性、ゴージャスな女性、清楚でかわいい感じの女性。
あまりの迫力に実はかなりおじけづいた。

それでも幸運にも、試験、一次面接、二次面接も通過し、最後は社長面接にたどりついた。

私を紹介してくれた友人を社長は覚えていらした。
「東山さんのお友達なんだって?彼女は最年少だったけど、とてもよくやってくれたよ。
実は管理職アシスタントは一名しか枠がないんだよ。もう他の人に決まっちゃったんだ。
でも、どうしてもうちに来たいということなら、翻訳の営業とペアを組んで、翻訳者を手配したり、翻訳の工程を管理したり、お客様の対応をしてもらう仕事をやってみないかい?
管理職の秘書より翻訳の現場に近いし、君にはそっちの方が興味あるんじゃないかな?」
「ありがとうございます!ぜひやらせてください!!」
「試験の出来を見ると、君はあまりIQが高くないようだから、他の人の何倍もがんばってもらわないとね。」
「はい!!努力します!!」

かくして、私は補欠合格のような感じで狙った会社に入社することができ、憧れの翻訳業界に入ることができた。

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外国語系のお仕事はキャリア重視のところがほとんどで、しかも募集の枠は数名、そこに数百名の応募が殺到する場合が多いようです。
でも、あきらめたら負け。
選考に落ちたとしても、それはあなたの価値が低いわけではありません。
ご縁がなかっただけ・・と気持ちをすぐに切替えて、アクションあるのみ!!
あなたの場所は必ずどこかにあるから!

ちなみにこの頃はインターネットという便利なツールはありませんでした。
就職活動に使っていたツールは、
アルクの翻訳事典イカロス出版の通訳・翻訳ジャーナル、とらばーゆ、ビーイング、朝日新聞の日曜版と月曜版の求人広告でした。

また、外資系専門の人材紹介の会社にも登録していました。
人材紹介の会社には、求人誌には出ないような案件がたくさんあります。
登録は無料ですし、コーディネータにいろいろとアドバイスもしてもらえるので、いくつか登録しておくと便利です。
毎日キャリアバンクの女性向けバンクならバックボーンもしっかりしていて案件も豊富です↓



posted by Emico at 14:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 転職の実際

第4話 予想外の予想屋さん

私は大学生のころ馬に乗っていた。
それで、翻訳会社に入社する前、馬に関係する就職の可能性も考えていた。
実際にある乗馬教室にも応募した。
面接に行ってみると、
「あなたのおじいさんにはとてもお世話になったんだよ。おじいさんは獣医さんだよね。」
と所長さん。
「・・・・・あの・・・私の祖父は獣医師ではないのですが・・・・。」
「え?あっそうだったの?じゃあ人違いだね〜。いや〜苗字が同じだったから、てっきりお孫さんかと思ってね。そうか、先生のお孫さんじゃなかったのか〜・・・。」
「・・・・・・」
ということは人違いなコネで書類選考を通ったのか・・・・!?
複雑な気持ちで、絶対不合格だなと肩を落として家路についた。
でも数日後に面接通過の知らせを受け取った。
所長さんも引っ込みがつかなくなってしまったのかな・・・。きっと。

それから、「とらば〜ゆ」の求人広告でも馬のお仕事に応募した。
「一般事務、初任給20万円、10時から5時、残業はありません。馬が好きなかた大歓迎!」
これだ!っと思って早速応募。
行ってみると、そこはビルではなく、高級マンションの一室。
出迎えてくれたのはソフトな感じのハンサムな中年男性。
おしゃれなスリッパを出されて、ふかふかの皮のソファに座るようにいわれた。
その男性が自らコーヒーを入れてくれて、ソファに座りながら筆記試験を受けた。
試験が終わると、その場で採点してくれた。
「あ、コーヒー飲んでくださいね。」
「は、はい・・・いただきます。」
そして面接開始。
「馬がお好きということですが、競馬とかはやったことがありますか?」
「馬は乗るのは好きなのですが、競馬はテレビで見るだけで・・・馬券を買ったのは2回くらいです。」
「そうですか。好きな馬っていますか?」
「はい、ホワイトストーンです。」
「え?ツウですね〜。ホワイトストーンが好きな人ってけっこうツウな人が多いですよね。どうして好きなんですか?」
「あの・・血筋がいい割にいつも3位とかで、人間なら銅メダルなのにとか思ってしまって、応援せずにはいられない感じがしてしまうんです。」
「こんなに純粋に競馬を愛しているひとは、応募者の中であなただけです。あなたのようにきれいで知的な女性なら即合格です。」
「・・・・あの、あ、ありがとうございます。」
「それで業務の内容なんですがね、うちはいわゆる競馬の予想屋なんでね。電話でお客様のお問いあわせに答えてもらったり、事務作業をしてもらったりしますんで。ここは私とあなたの二人だから、まあ、のんびりやってもらえれば大丈夫なんで。」

予想屋さんなんてまったく予想外だった。
面接の終わりになって、ここが予想屋さんのオフィスだったことをはじめて知った。
それまで会社の事業内容を確認しなかったなんて私も随分トンマだった。
でもさすがに、甘いマスクで口のうまい男性と住宅仕様のマンションの一室に毎日こもるのも、予想屋さんの仕事をするのも、あまりに危険な香りのするお仕事なので、後日お断りすることにした。

念願の翻訳会社から合格通知をもらったのはそのすぐ後のことだった。

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ちなみに私が応援していた無冠の芦毛ホワイトストーンは名馬は劇的に生きるにエピソードが載っています。

posted by Emico at 16:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 転職の実際

第3話 コンテストに応募したのがきっかけで、絵本の翻訳のバイトのチャンスをGET!

夜は翻訳学校に通いながら昼間は就職活動で大苦戦していたある日のこと、新しく出た翻訳事典を見ていると、「山形県遊学館 外国絵本翻訳コンクール」の広告が出ていた。
優勝すると自分の翻訳した絵本が出版というものだ。
私は優勝はもちろん狙ってはいなかったが、何かのきっかけになるかもしれないと思って応募してみた。

絵本の翻訳は実はとても難しい。
外国語の絵本は韻が激しくふんであって、文章全体も歌うようなリズムがある。
音読してみないと気付かないかもしれないが、音節の数もそろえてあったりする。
また、外国では日常的に親しみのあるものでも、日本にはまったくないようなものが出てくることもある。
課題になっていた絵本も例外ではなかった。
私は未熟ながらも七・五調に訳文をまとめ、なんとか提出してみた。

それがご縁になった。
コンテストの運営に参加していた絵本の輸入・出版会社で、外国の絵本を図書館に納品する際に添付する訳文を翻訳するスタッフを募集していたのだ。
もちろんその中にはスペイン語の絵本もあり、スタッフも足りなかったようで、お小遣い稼ぎ程度の翻訳の仕事をちょこちょこともらうことができた。
翻訳学校に通っていた私にとっては、とてもうれしく、楽しく、ありがたいお仕事だった。

お仕事のチャンスはどんなところに隠れているかわからない。
ダメもとでも、いろいろな出会いを求めてアクションするのが大切だな〜と実感した。

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山形県遊学館 外国絵本翻訳コンクール は児童文学翻訳で今や有名なコンクールです。
月刊児童文学翻訳の98年9月号(No.2)で「応募原稿の書き方徹底研究 〜絵本コンクールに向けて〜」( http://www.yamaneko.org/mgzn/dtp/1998/09.htm)という記事もありますので、参考になるかもしれません。

私が応募した頃は自分で勉強する以外なかったので、近所の図書館で絵本を読みあさり、国立国会図書館のこども図書館で原書を見て勉強しました。

ちなみに私が最近気になる絵本は終わらない夜
ミステリアスな詩とイラストが不思議な世界にいざなってくれる大人の絵本です。

絵本のネットショップで気に入っているのは、絵本と絵本グッズの専門店【絵本ナビShop】です。
対象年齢ごとに分類されていたり、DVDや絵本グッズも充実しているところがうれしいショップ。
フランスの絵本ペネロペの日記帳やはらぺこいもむしのカレンダーなども入手できます。
posted by Emico at 18:04 | Comment(0) | TrackBack(1) | 転職の実際

第2話 大学を卒業したら、翻訳会社に就職したい!

私がこの翻訳会社に入ったのは、大学生の頃からの希望だった。私は大学時代は外国語学部でスペイン語を専攻していた。
4年生になって、いざ就職活動となったとき、学校に来るいろいろな求人情報を探したけれど、
自分が本当にやってみたい職種は見つからなかった。
外国語学部だからといって、外国語に特化した求人があるわけではないのだ。
ちょうどその頃、海外の日本語学校の理事長さんから、現地で日本語教師として就職しないかと声をかけてもらっていた。
春休みに参加したホームステイプログラムのレセプションパーティーで、スペイン語を話せないひとたちの通訳をしていた時に
スカウトされたのだった。
ちょうど日本語教師養成講座も在学中に履修していたので、せっかくだから、現地で就職してみることにした。
そんなある日、本屋さんで「翻訳事典」というアルクのムックをみつけた。
「翻訳か!これこそディープに外国語な仕事だ!」
世間知らずな大学生だった私の夢はふくらんだ。
大学を卒業しても、日本語教師になっても、いつか翻訳者になれるように勉強しよう!

海外で日本語教師をしているあいだ、私は「翻訳事典」を隅から隅まで熟読した。
練習問題は何度も解いた。
単語集も丸暗記した。

そして帰国したときに「翻訳事典」のイエローぺージに載っている「翻訳者インターン募集」の企業にどんどん電話してみた。
ところがバブル崩壊のあおりで、インターンを受け入れるような余裕のある企業はなくなっていた。
もちろん、第二新卒同様の社会経験の少ないワカゾウを正規の翻訳者として採用してくれるような会社はあるはずもない。

そこで、今度は「翻訳事典」の学校案内のリストの中から、夜間の通学制で卒業後の就職支援の制度もある翻訳学校を選び、
早速入学した。
そこで実務翻訳を勉強しながら、昼間は就職活動をして翻訳会社への就職のチャンスをねらっていた。

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アルクの「翻訳事典」は、翻訳の仕事にはどういったカテゴリーがあるのか、各分野の翻訳の例文、現役翻訳者のインタビュー、翻訳者になるための就職ガイドなどが載っていて、まさに入門書の決定版。
これから翻訳の仕事をしてみたいなら目を通すだけでもためになる一冊です。


翻訳事典(2008年度版)
posted by Emico at 23:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 転職の実際

第1話 ナゾの言語の命のFAX

ここは通訳・翻訳を請け負うエージェントのオフィス。
私はここに入社してまだ間もない。
正直いって、まだ馴染めない。
翻訳コーディネーターの先輩たちはカラフルでボディーコンシャスなミニスカートのスーツをまとい、コーヒーを片手に、前髪をかきあげながら、外人スタッフと流暢に打ちあわせをしている。
バイリンガル校正のスタッフたちは、エキセントリックな装いで、話しかけてもあまりにも不愛想。
とにかく皆近寄りがたいオーラを放っている。
しかも新卒者は採用しない会社なので、同期の新入社員というのがいない。
新人は私一人なのだ。
でも、学生時代から夢みていた通訳・翻訳の現場で働けるようになったのだから、とにかく頑張ろう。

そんな ある日のことだ。
一枚のFAXが流れて来た。見慣れない文字。しかも手書きだ。翻訳も請負う広告代理店からの翻訳依頼だ。FAXはいくつかのオフィスを巡って来たらしく、文字はかすれ、FAXの送信記録が紙の隅に幾重にもおりかさなっていた。翻訳業界ではよくあることだ。自分のところで手に負えなくて他のエージェントにマタ振りする。そのエージェントも手に負えないということになると、更にマタ振りするのだ。まるで病院をたらいまわしにされる難病の患者さんのようにだ。

「先輩、これ何語かわかりますか?」
FAXを受け取った担当コーディネーターもさすがにわからなかった。
言語がわからなければ、翻訳スタッフに手配することさえできない。
とりあえず、先輩コーディネーターにきいてみた。
「あら、これはXXX語よ。」
「えー!そんな言語できる翻訳者いるんですか?!」
「うちに登録している翻訳者だと、2人だけいるわ。でも2人だけしかいないから、今すぐに連絡がつくかどうか確実じゃないわよ。スケジュールが空いているかどうかも何ともいえないし・・。とにかく電話してみて。・・・あと、クライアントの御希望の納期はいつかしら。翻訳者が少ないからクイックレスポンスは難しいから。」
「大丈夫です。急いでいないからスタッフに合わせるっておっしゃってました。」
「OK!じゃあ速攻この2人に電話してみて。」

電話をしてみると、片方の翻訳者の登録の電話番号は既に使われていなかった。登録したものの翻訳の依頼が来ないから引越しても新しい連絡先をエージェントに知らせていないのだ。まあ、無理はない。最後の望みを託したもう一方の翻訳者が留守電に応えてくれたのはその日の夕方だった。

「いつでしたら翻訳上がりますか?一枚だけなので、対応していただけると助かるのですが・・・。」
「そうですね。今抱えている仕事の合間にかたずけちゃうようにしてみます。あさっての朝の仕上がりでも大丈夫ですか?」
「もちろん大丈夫です。では、すぐにFAXで転送しますね。」
たらいまわしにあったFAXはかくして翻訳者の手元に届き、コーディネーターもほっとした。これであとは和文になった原稿を待つばかりだ。

・・・と思ったのは束の間、さっきの翻訳者から電話が入った。
「このFAXの内容をクライアントは御存じでしょうか?」
慌てた口調だ。でも何でそんなこと言うんだろうと思った。
「もちろんわかってなんかいませんよ。何語かもわからずに、いくつもの翻訳会社をたらいまわしになっちゃった原稿ですから。それに手書きで読みにくいですしね。」
「だったらすぐにクライアントに連絡してあげて!この人の国で戦争が始まりそうだから、出国できるうちに出国したいそうなの。そして、この手紙に書いてある鈴木さんっていうかたをたよりに日本に来たいから連絡をとりたいっていうFAXなの!しかも日付が数週間前なの!かなり長い間ねかされちゃったみたいだから、とにかくクライアントに大至急伝えてあげて!翻訳料はいらないから!」
おりしも世間では、その国の紛争を盛んに報道している最中だった。間に合わなかったのだ!コーディネーターも青ざめた。

その知らせは、クライアント経由で、その鈴木さんというかたご本人にすぐに伝えられた。

後からわかったのだが、その後もうFAXの送り主との連絡はとれなかったということだった。誰にも読めなかったFAXは、いのちのFAXだったのだ。
翻訳の仕事は時に人の人生も左右する仕事なんだ・・と私は凍りついた。

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何の言語かわからないからといっているようではプロの翻訳コーディネーターにはなれません。
入社したての私は、まず原稿が何語で書かれているか判断できるように勉強を開始。
その時使用した教材は指差し会話帳。
いろいろな言語の文字、いろいろな国のアウトライン、基本単語がイラストで楽しくわかるので通勤時間やお風呂時間にながめてました。



私はスペイン語学科出身なのですが、同じスペイン語の国でも、メキシコ、キューバ、スペインなど国ごとになっているので、国によって言い方が違うこともわかっておもしろいんです。


ワールドカップ対応版、恋愛版、グルメ版などおもしろい視点のものもあるので集めたくなってしまいます。






イタリアの会社に転職した友人に勧めたら、かなり気にいって、必要なページをカラーコピーしてヴィトンのシステム手帳にファイルしていつも持ち歩いて勉強していたのはこれです↓。


今はDSソフトで音声もついているバージョンもあるからもっと便利。



posted by Emico at 18:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳現場のプチ事件

はじめに

外国語の仕事がしたいなーと漠然と思ったことはありませんか。
外国語の仕事といってもいろいろありますが、翻訳・通訳関連の仕事もやってみたい仕事のひとつではないでしょうか。

翻訳・通訳業界は、業界的にもまた一種独特なものがあります。
商品は形のない「ことば」。しかも全てがオーダーメイド。
どんなものが出来てくるのかわからないまま、信用だけで発注されるわけです。
そう考えるとなんだかヤクザな商売みたいですよね。

それに、翻訳・通訳業界は翻訳者や通訳者だけでなく、いろいろな専門職の人々が活躍しているところなんです。
たとえば翻訳・通訳サービスの営業マン、翻訳・通訳コーディネーター、テクニカルライター、コピーライター、リライター、バイリンガル校正者、外国語のキーパンチャー、DTPオペレーターなどなど。
みんなそれぞれに外国語のプロです。
それぞれ持ちあわせている能力が違うんです。
得意言語も様々。
英語はもちろん、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語、韓国語、インドネシア語など多岐にわたっています。
だからって全員帰国子女かといったら、そうでもなく、純日本製で優秀なスタッフも大勢います。

自分を磨くことが大好きな人たちで、翻訳会社勤務以前や退職後の人生もエネルギッシュ。
留学したり、大学院に入ったり、フライトアテンダントになったり、外資の社長秘書に転職したり、起業したり。
プライベートもパワフルで、外人キラーあり、医者キラーあり、弁護士とゴールインするものありといった感じ。
そんな濃い〜キャラの集まる職場でまきおこるプチ事件の数々はとっても刺激的。

このブログは、実際のできごとをもとに書いていますが、登場人物などは仮名を使っています。
ですが、スキルアップのツールや幸せな結婚のきっかけなどは具体的に説明しますので、読んでくださる皆さんの夢の実現へのヒントになると思います。
このブログがあなたのしあわせGETのお役に立てればうれしいです。
posted by Emico at 14:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | はじめに

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