第4話 予想外の予想屋さん

私は大学生のころ馬に乗っていた。
それで、翻訳会社に入社する前、馬に関係する就職の可能性も考えていた。
実際にある乗馬教室にも応募した。
面接に行ってみると、
「あなたのおじいさんにはとてもお世話になったんだよ。おじいさんは獣医さんだよね。」
と所長さん。
「・・・・・あの・・・私の祖父は獣医師ではないのですが・・・・。」
「え?あっそうだったの?じゃあ人違いだね〜。いや〜苗字が同じだったから、てっきりお孫さんかと思ってね。そうか、先生のお孫さんじゃなかったのか〜・・・。」
「・・・・・・」
ということは人違いなコネで書類選考を通ったのか・・・・!?
複雑な気持ちで、絶対不合格だなと肩を落として家路についた。
でも数日後に面接通過の知らせを受け取った。
所長さんも引っ込みがつかなくなってしまったのかな・・・。きっと。

それから、「とらば〜ゆ」の求人広告でも馬のお仕事に応募した。
「一般事務、初任給20万円、10時から5時、残業はありません。馬が好きなかた大歓迎!」
これだ!っと思って早速応募。
行ってみると、そこはビルではなく、高級マンションの一室。
出迎えてくれたのはソフトな感じのハンサムな中年男性。
おしゃれなスリッパを出されて、ふかふかの皮のソファに座るようにいわれた。
その男性が自らコーヒーを入れてくれて、ソファに座りながら筆記試験を受けた。
試験が終わると、その場で採点してくれた。
「あ、コーヒー飲んでくださいね。」
「は、はい・・・いただきます。」
そして面接開始。
「馬がお好きということですが、競馬とかはやったことがありますか?」
「馬は乗るのは好きなのですが、競馬はテレビで見るだけで・・・馬券を買ったのは2回くらいです。」
「そうですか。好きな馬っていますか?」
「はい、ホワイトストーンです。」
「え?ツウですね〜。ホワイトストーンが好きな人ってけっこうツウな人が多いですよね。どうして好きなんですか?」
「あの・・血筋がいい割にいつも3位とかで、人間なら銅メダルなのにとか思ってしまって、応援せずにはいられない感じがしてしまうんです。」
「こんなに純粋に競馬を愛しているひとは、応募者の中であなただけです。あなたのようにきれいで知的な女性なら即合格です。」
「・・・・あの、あ、ありがとうございます。」
「それで業務の内容なんですがね、うちはいわゆる競馬の予想屋なんでね。電話でお客様のお問いあわせに答えてもらったり、事務作業をしてもらったりしますんで。ここは私とあなたの二人だから、まあ、のんびりやってもらえれば大丈夫なんで。」

予想屋さんなんてまったく予想外だった。
面接の終わりになって、ここが予想屋さんのオフィスだったことをはじめて知った。
それまで会社の事業内容を確認しなかったなんて私も随分トンマだった。
でもさすがに、甘いマスクで口のうまい男性と住宅仕様のマンションの一室に毎日こもるのも、予想屋さんの仕事をするのも、あまりに危険な香りのするお仕事なので、後日お断りすることにした。

念願の翻訳会社から合格通知をもらったのはそのすぐ後のことだった。

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ちなみに私が応援していた無冠の芦毛ホワイトストーンは名馬は劇的に生きるにエピソードが載っています。

posted by Emico at 16:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 転職の実際
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