第12話 チーズのカビのように生き残るのがコツよ。

前職がIT企業の営業だったという営業ウーマンとペアを組んでからというもの、私の会社生活はいろいろと悩みの多い毎日になった。
とはいうものの、私はハイティーンの頃マクドナルドでアルバイトをしていたことがあったので、その経験が役に立っていた。
当時、私がバイトをしていたマクドナルドの支店は殺気だった職場で、新人だからといってノロノロオロオロしていると、
「何やってるんだ!つかえねーなー!」
と罵声をあびせられたり、お客様の席にハンバーガーを届けに行った際に他のお客様が床にひっくりかえしたジュースをモップで掃除でもしようものなら、マネージャーに
「お届けにいつまでかかってるんだ!!さぼってるんじゃねー!!」
と罵倒されるようなところだった。
それでもスマイル0円なので、ニッコリしていなければならなかった。
東大出の新卒正社員もカウンター業務で先輩女子高生やアルバイトマネージャーにどなられて1ヵ月くらいで辞めてしまったりしていた。
でもこのマクドナルドのバイトのおかげで、上司に不条理にどなられてもニッコリ仕事すればお客様に「ありがとう」と言ってもらえることだってあるし、仕事中はキツイけど仕事が終わればめちゃくちゃいい人な先輩だっていることも学ぶことができた。
心の中でムカついていても、泣きたいほどイライラしていても、とりあえずニコニコ仕事をしていれば、お客様や同僚にいやな雰囲気が伝染することはないことも学べた。
この経験が翻訳会社の現場で役に立つことになったのだ。
ちょうどその頃、私をOJTでトレーニングしてくれた小金沢さんも別の新人営業ウーマンとペアを組まされることになって苦労されていた。
私はそんな小金沢さんを遠巻きに見ながら、小金沢さんを見習ってがんばらなければ・・・と自分にはっぱをかけていた。

そんなある日のこと、掃除のおばちゃんが冷蔵庫のところで怒りにふるえた叫びを上げた。
「だれ!!こんなカビだらけのチーズを入れっぱなしにしているのは!!!!!」
おばちゃんは拭き掃除ついでに冷蔵庫も拭いてくれるつもりで冷蔵庫を開けたらしい。
「あのー・・・私のチーズです・・・」
小金沢さんが身を縮こませながらおばちゃんの方に駆け寄った。
「すみません・・・これ、こういうチーズなんです。別に放置しているわけじゃなくって、お昼に食べてるんです。」
「でもなんかカビくさいわよ」
「すみません・・・この黒いカビがおいしいんです・・・」
「あっそう、じゃこのままにしちゃうわよ!ふん!」
「すみません・・・」
フロアにクスクス笑いが広がった。
小金沢さんはDancyuに付箋を貼りながら読んでしまうほどのグルメ。
いつもチーズ専門店で珍しいチーズを調達してはランチタイムのデザートに食べていることは皆が知っていることだった。
外国帰りの多いこのフロアではブルーチーズに驚く人は今までいなかったのだ。

その日のお昼休みに、私がいつものように仕事のことでブルーになりながらお弁当を食べていると、小金沢さんがとなりにやってきた。
「小金沢さん、さっきは大変でしたね。おばちゃんはブルーチーズとか見たことなかったんですね。」
「そのようですね。かなりはずかしかったです。でも今日は白いカビの方も持って来てたんですよ。ブリーチーズ。好きだって言ってたでしょ。一緒に食べませんか?」
「え?いいんですか?」
「だって一緒に食べようと思って買ってきたんですからね。」
「え〜!うれしい〜!!小金沢さん、ありがとうございます!!」
小金沢さんはチーズ専門店の紙袋からフランス直輸入のブリーを取り出して、切り分けてくれながら私に言った。
「最近大丈夫ですか?他の人はニコニコがんばってるねって言ってますけど、私にはなんだか元気がないように見えますよ。つらいんじゃないですか?」
私はブリーを食べる手が止まった。
今まで我慢していたことがあふれ出してきそうだった。
涙がまつげの内側でユラユラと視界をゆらめかせた。
返事をしたらあふれてしまいそうだった。
「でもね、長くいたもの勝ちですよ。カビはカビでもチーズのカビなら掃除のおばちゃん以外は文句言わないでしょ。自分がチーズのカビになっちゃえば、もう誰にも文句は言われないんですからね。チーズのカビのように生き残るのがコツですよ。」
小金沢さんは小声でそんな意味深なことを言って、私の目を覗き込んでうなづいた。
私の頬に涙がつたった。
私は涙を流しながら、小金沢さんに微笑み返して、何度何度もうなづいた。

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実は、私は山羊や羊のミルクを使ったチーズや青カビ系のチーズが苦手で、メキシコに住んでいるときは必ず味見させてもらってから買っていました。
(銘柄だけではわからなかったのです・・・。)
なので、味見させてもらえない日本の大型スーパーなどではチーズを買うときにしりごみしていました。
ただ、フランス産のブリーだけは大好きだったのです。



それで、いろいろチーズ専門店を探していたのですが、めちゃくちゃたよりになるサイトを発見しました!
オーダーチーズ・ドットコム というショップさんなのですが、ひとつひとつのチーズに詳しい解説やレビューがついていて心強いのです。
チーズを使ったレシピやチーズのおいしいお店情報も載っていてるし、チーズアカデミーもあったりして、チーズ初心者からディープなチーズ好きまで楽しめちゃうサイトになっていました。

今私がはまっているデザートチーズも充実で、リピートでおとりよせ必至なチーズがいくつもありました!



ありそうで無かった「チョコレート風味のチーズ」





ラム酒の風味とマイルドなクリームチーズ、香ばしいヘーゼルナッツのスライスが絶妙のコンビネーション





コーヒーリキュールを練りこんだやわらかなクリームチーズの周囲には、贅沢にヘーゼルナッツやチョコレートがまぶされていて、パッと見て高級感あふれるデザートのようなチーズ


おうちのコーヒーブレイクを贅沢なカフェタイム気分に変身させてくれる私のお気に入りチーズ専門店オーダーチーズ・ドットコムはこちら↓



posted by Emico at 13:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 翻訳現場のプチ事件
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